日本価値創造ERM学会は、価値創造を目指す経営の枠組としてCOSO-ERMの枠組みを参考にしながら、企業全体の価値創造経営プロセスに関わる有効なERM経営プロセスのあり方について研究調査の交流の場を作り、社会の中で価値創造ERMに関して学習プロセスとして機能することを狙いとしています。
当学会は、産学官の多くのこの領域の研究者・分析調査者・経営者が自由闊達な意見交換、情報交換、研究交流及び研究発表するための学術的組織です。個人会員がそれぞれの立場から個人ベースでリベラルな相互交流できる場を形成し、この領域を学術的領域としていっそう発展させ、企業経営に有効な価値創造経営プロセスの開発を進展させることにより、「日本企業の経営力」を高めていくことを願っています。
設立趣意書
本学会は、日本価値創造ERM学会と称する。
学会英文名はThe Japanese Association of Value-Creating ERMとする。またその略称はジャブサーム、英文略称はJAVCERMとする。
経済の成熟化とグローバル化、資本蓄積の高度化、情報通信技術の高度化、「個」の概念の進展など経済社会の大きな進化の中で、価値創造主体としての企業の重要性が再認識される一方、その社会性・外部経済性へのあり方について環境が大きく変化している。その中で企業経営をめぐる考え方が、株主価値経営から社会全体のステークホルダーから見た企業価値経営へと大きく進化している。そこでは価値の発生源が、バランスシート(BS)資産ではなく、人的資産などの無形資産にあるという理解が進み、企業間のネットワーク経営や無形資産結合の戦略的提携も進んでいる。価値の根源が「広義の知識」であり、新しい知識は過去を陳腐化するリスク要因でもある一方、資本は絶えず価値創造につながる新しい知識(人的資産)を需要している。ITなどの技術は、そのイノベーションの流れを加速するだけでなく、競争環境を激化し、資源需要や商品需要に関してあらたな不確実性(リスクと機会)を作り出している。
このような中で企業経営環境をめぐる進化と不確実性(リスク・機会)は複雑化・巨大化・グローバル化している。それゆえ、進化や不確実性への対応能力が高い価値創造経営の思考法や有効な経営手法が求められている。その中で、米国経営団体がまとめた2004年のCOSO(The Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)の企業全体のリスクマネジメントの枠組みはそのようなガイドラインの一つとして、米国で大きな評価を得ている。実際、COSOのERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)の枠組みは戦略的目標を含む経営全体のマネジメントプロセスに関わるものであり、価値創造を目指す経営の枠組みと理解できる。
日本価値創造ERM学会は、このCOSOの枠組みを参考にしながら、しかしそれに限定するのではなく、価値創造ERM経営法を、企業全体を見渡し、企業全体の資源を有効活用し、進化の中で機会とリスクに対して有効な意思決定を可能にし、価値創造に対して全体的な最適化を狙う統合的経営思考法・プロセスとして定義する。このようなERM経営の考え方では、企業は有効な事業リスクポートフォリオを作ることで不確実性の中から将来の価値・利益を作り出す知的組織であり、不確実性・リスクに戦略的に関与することが求められている、とみることができる。そこでは、安定的な企業価値創造のためのガバナンス・内部統制あるいは企業文化も重要な要素として含まれている。
このような視点から、本学会は次の基本趣旨に基づくものとする。
[設立趣旨]日本価値創造ERM学会は、価値創造を目指す経営の枠組として2004年COSOのERMの枠組みを参考にしながら、企業全体の価値創造経営プロセスに関わる有効なERM経営プロセスのあり方について研究調査の交流の場を作り、社会の中で価値創造ERMに関して学習プロセスとして機能することを狙う。
そこでは統合的な経営全体と各事業ラインや支援部門との結合のあり方の問題、具体的なリスクマネジメントプロセス、内部統制プロセス、ガバナンスプロセスなどプロセスの有効性評価、リスク選好のあり方と収益性の関係、企業文化と社会やリスクの関係、情報開示と顧客などステークホルダーとの関係、などの関係性の有効性評価、企業価値創造において企業が資産として保有する無形資産の結合と有効利用、不確実性・リスクの有効な識別と対応法とリアルオプションなど有効な意思決定の識別法、事業リスクの評価や事業リスクポートフォリオの選択、不確実性と設備投資の有効な意思決定、事業継続マネジメント、ステークホルダーとのコミュニケーション、企業の中での情報共有などの研究対象を、企業全体の価値創造との関係で理解することを狙う。
特にCOSOの8つの要素に関わる研究調査とその結合のあり方など、有効な価値創造ERM経営の内外の事例研究などの蓄積を通して、社会の中に研究・調査・学習プロセスをつくり、企業の経営力の強化につなげていくことを狙う。企業全体の価値創造プロセスの組み込まれた生産、財務、販売、統制などのプロセスの統合的な視点からの有効性である。
学会は、産学官の多くのこの領域の研究者・分析調査者・経営者が自由闊達な意見交換、情報交換、研究交流及び研究発表するための学術的組織とする。学会は、個人会員がそれぞれの立場から個人ベースでリベラルな相互交流できる場を形成し、この領域を学術的領域としていっそう発展させ、企業経営に有効な価値創造経営プロセスの開発が進展させることを狙う。結果として「日本企業の経営力」を高めていくことを願うものである。
学会組織は個人会員が基本であり、参加資格はこの領域に興味を持ち、個々の考え方の違いを互いに尊重しつつ、設立趣意に賛同するものとする。運営組織はリベラルかつ民主的なものとする。本学会への参加資格は、本学会の設立趣旨に賛同するものとする。
有効な価値創造ERM経営の重要性を認識し、この設立趣旨にご賛同していただける方々、この領域の学術的研究のみならず実際的な応用法の開発と発展を願う方々のご参加をぜひともお願いします。